幸せの定義──君と僕の宝物──
その頃、トモはユウと一緒にレナの見舞いに訪れていた。

「片桐さん、具合どう?」

「あっ…今日はトモさんも来てくれたの?」

レナは少し驚いた様子でトモの顔を見た。

「今日は休みだったから。久し振りに片桐さんの顔みたいなーって。」

「ハヤテさんの結婚式で会ったから、そんなに久し振りでもないんじゃない?」

レナが首をかしげると、トモはニコニコ笑いながら顔を近付けた。

「いやー、オレは片桐さんの顔なら毎日でも見たいよ。ずっとこうして眺めてたい。」

トモがそう言うと、ユウが殺気を漂わせてトモの背後に立った。

「トモ…オレの大事な嫁を口説くな。」

ユウはトモの背後から、握りしめた両手でこめかみをグリグリやった。

「いってぇ…。こえーなあ、ユウは。意外とヤキモチ妬きなんだな。」

「うるさい。そんな事言うやつは帰れ。」

「ユウったら…。せっかく来てくれたのに、そんな事言っちゃダメでしょ?」

レナにたしなめられるユウを見て、トモはおかしそうに笑った。

「片桐さん、お母さんみたいだ。…ってか、実際お母さんなんだよな。」

「まだお腹の中だけどね。」

レナは優しくお腹を撫でて、母親の顔で微笑んだ。

「その子が生まれるまでお腹の中で守れるのは片桐さんだけだからさ。立派なお母さんだ。」

「トモもたまにはいい事言うんだなぁ。」

「“たまには”は余計だ。」

軽口を叩きながらも、トモは仲睦まじいユウとレナの様子を見て、どことなく遠い目をして微笑んでいる。

ユウは今日のトモに、なんとなく違和感を覚えた。

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