幸せの定義──君と僕の宝物──
しばらく3人で話した後、トモがイスから立ち上がった。

「じゃ、オレはそろそろ退散するかな。」

「トモさん、わざわざ来てくれてありがとう。すごく楽しかった。」

ベッドに横たわったレナがお礼を言うと、トモは笑って、両手でレナの右手を握った。

「オレは毎日でも会いに来たいんだけどさぁ…邪魔するとユウが怒るから…。」

「トモ…またオマエは…。」

ユウが背後で握りこぶしを構えて低く呟くと、トモは慌ててレナから手を離し、笑いながら素早くその場をすり抜けた。

「冗談だよ。ユウ、貴重な夫婦水入らずの時間を邪魔して悪かったな。それじゃ、ホントに行くわ。またね、片桐さん。お大事に。」

「うん。ありがとう。」

トモが手を振って病室を出ようとした時、ユウはどうしてもトモの事が気になって、後を追った。

「売店行くついでにそこまで送るよ。」

エレベーターに乗って、ユウはトモの様子をチラリと窺った。

(…なんかあったのかな?)

トモは何も言わないが、ユウはどうしても、今日のトモに感じた違和感が拭えない。

「今日の晩飯、一緒にどう?」

ユウが尋ねると、トモはユウの顔を見上げて笑った。

「珍しいじゃん。」

「レナが入院してから、帰っても一人だから飯が味気ないんだよ。面倒でつい適当に済ませるしな。」

「オレなんか独り身だからな…普段はそれが当たり前だぞ?酒とつまみだけで終わるのなんてザラだし。」

「寂しいな、オイ…。」


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