幸せの定義──君と僕の宝物──
トモはタバコに火をつけて煙を吐き出し、グラスの水割りを飲み干した。

「でも、帰国してまた片桐さんに会って…。お互いに好きだって素直に思えた?」

「最初は気まずかったよ。でも何回か会って、元の幼なじみだった頃くらいの関係に戻れて、今度こそ好きだって言おうと思ったんだけど…あの時はホラ…レナ、須藤さんと婚約してたから…。」

「あぁ…そうだったな。」

「ショックだったよ。もう誰かと結婚して幸せになってるかもなんて思ってたくせにさ…自分の気持ちがどうにもできなくて…またレナを泣かせて…わざと嫌われるようなひどい事してさ…それで終わらせたつもりだったんだけどな…もう朝なんか来なきゃいいとか思いながら引き籠って…でも、ニューヨークに行ったはずのレナが戻ってきて…一緒にいたいって、言ってくれたんだ。それでやっと、好きだって…初めて伝える事ができた。」

「そっか…。」

トモは小さくため息をついて、タバコの煙を吐き出した。

「長い片想いだったんだな。」

「バカみたいだろ。素直に好きだって言えば、そんな遠回りしなくて済んだかも知れないけどさ…若かったしな。レナを失うのが怖かったんだ。結局、自分でめちゃくちゃにしちゃったんだけどさ。」

ユウは苦笑いを浮かべながら、カラになった二人分のグラスに新しい水割りを作った。

「付き合いだしてからも、結婚してからもいろいろあって、何度もレナを泣かせて…その分、オレの一生かけてレナを幸せにしようって思ってる。」

「なるほどな…。ユウの溺愛ぶりにもうなずけるわ。」

トモは笑いながら、タバコの火を灰皿の上でもみ消した。


< 50 / 241 >

この作品をシェア

pagetop