幸せの定義──君と僕の宝物──
「彼女は…トモと別れてその男と付き合ったのか?」

ユウがためらいがちに尋ねると、トモは静かに首を横に振った。

「いや…。両方選べなかったんだ。それからすぐ、彼女はバイト先辞めちゃってさ…オレの前から姿消した…。もう13年も前の話だ。それなのにさ…ハヤテが結婚するって言い出した頃から、彼女が夢に出てくるんだよ。」

トモの夢の話は、ユウが見ていたあの頃のレナの夢と、どこか似ていた。

レナと離れていた時の事が思い出されて、ユウはトモの胸の痛みがなんとなくわかるような気がした。

トモは左手で頬杖をついて、グラスに付いた水滴を右手の指先でなぞる。

「オレって女々しいのかなぁ…。あれからオレはイイ男になろうと必死で頑張ってさ…。他の子とも付き合ったし…あの頃に比べたら、すっかり大人になったじゃん?」

ユウはロンドンで初めて会った頃のトモを思い出しながら、目の前にいる今のトモを見た。

「確かに…トモは5人の中で一番変わったな。昔はもっと…なんて言うか、真面目な好青年って感じだった。今はヤンチャな大人って感じだけど。」

「酒も強くなったし…昔みたいに、かわいい女の子と二人きりでいてもいちいちドキドキしたりしないしさぁ…。適当に女の子とも付き合ったし、見た目も変わったろ?ただのイイやつじゃなくなったと思うんだけどなぁ…。」



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