幸せの定義──君と僕の宝物──
トモはイスの背もたれに身を預けて組んだ両手で後ろ頭を抱え、天井を見上げた。

「トモはさ…なんでそんなに変わろうと思ったんだ?」

「なんで…?なんでって…。もしまた彼女と会えたら、今度こそオレを選んで欲しいって、そう思ってたからだよ…。弱くて頼りないオレじゃなくて、強くて男らしいやつになりたかったんだ、リュウみたいに。」

トモの口から出てきた意外な言葉に、ユウは驚いてまばたきをした。

「そうすればさ…死ぬほど好きな女を、昔みたいにリュウに取られたりしないだろ。」

「えっ…リュウに?!」

ユウは驚いて、思わずイスから立ち上がった。

「うん…。リュウが悪いわけじゃないけどさ…オレの彼女だって知らなかったわけだし?リュウも初めて本気で好きになったって言ってたしさ…。彼女も、オレとリュウが友達だって知らなかったんだしさ…。結局は、弱くて頼りなかったオレのせいなんだよ。」

「マジか…。そんな事ってあるんだな…。」

衝撃的なトモの失恋話に、ユウは動揺を隠しきれなかったが、とりあえず静かにイスに座り直した。

「リュウ…今でも何も知らないのか?」

「いや、話したよ。ユウの結婚式の後に二人でバーに寄った時。片桐さんのキレイな花嫁姿見てたら、なんとなく彼女の事思い出してさ。もう話してもいいかなって。でも…リュウに話した事、今になって後悔してる。」

「なんで?」

「そん時はなんとなく思い出話で収まったんだけどさ…。この間、彼女の夢の話をしたらさ…リュウ、悪かったってまた謝るんだよ…。多分今でもリュウは、昔の事すげぇ後悔してる。」


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