幸せの定義──君と僕の宝物──
「あぁ…それはあるかもな…。リュウ、ああ見えて繊細だから。」

「それ、昔の連れにも言われたんだ。ユウにはわかるのか?」

「なんとなくだよ。ロンドンでできた初めての友達だからな。トモがロンドンに来る前は、二人でいろいろ話したんだ。見た目は強そうなのに、めちゃくちゃ優しいんだもんな。」

「だろ?それに男らしい。」

「そうなんだよな…。」

トモはタバコに火をつけて、ため息混じりに煙を吐き出した。

「今日さ、リュウ、同窓会に行ってんだけど…彼女も来るかも知れないから一緒に帰らないかって誘ってくれたんだよ。二次会くらいなら紛れ込んでも誰も文句言わねぇからって。でもオレは…行けなかった。」

「なんで?」

「今の彼女が昔と全然違ってるかもとかさ…もう結婚して幸せに暮らしてるかもとか…いろいろ考えたら、彼女に会うのが…怖かった。」

「怖かったんだ…。」

「それにさ…もし昔みたいにかわいくて、独身だったとしてもだよ?他に好きな男がいるとか…今のオレは好きじゃないとかさ…やっぱリュウがいいとか言われたら、もう立ち直れないじゃん。想い出はキレイなままの方がいいのかも知れないって思ったりしてさ。」

「そう…かな?」

ユウは、若かった頃のトモを見ているような、不思議な気分でトモの言葉を聞いていた。

トモはまだ彼女への想いにけりをつける事ができず、彼女のために変わったはずの今の自分に自信を持てないでいる。

(トモ…彼女が好きだったのは、彼女と付き合ってた頃のありのままの自分だったんだって思ってるのかな…。だから余計に会うのが怖いのかも…。)


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