幸せの定義──君と僕の宝物──
ユウの言葉に別の人生を生きる自分を思い浮かべたのか、トモはおかしそうに笑った。

「それもそうだな。ロンドンに行ってなかったら、オレらも出会ってない。」

「いろいろあるけどさ…人生、なるようになってんだよ。無駄な事なんてないんだって、オレは思う。」

「かもな。ハヤテなんか彼女と別れてまでロンドンに行ったのに、また出会って結婚までしたんだもんなぁ…。」

ユウはいっぱいになった灰皿を持って立ち上がり、キッチンのごみ袋に大量の吸い殻を捨てて席に戻ると、穏やかに微笑んだ。

「トモもリュウも…初めて本気で人を好きになったんだろ?間違ってなんかないんだって、オレは思うよ。」

「なんか大人だなぁ、ユウは…。やっぱ既婚者は違うわ。あー、オレも早く結婚してぇなぁ。また本気で好きになれる子見つけてさ…今度こそ幸せにしたいし、相手にもずっとオレだけ愛してもらいたい。」

そう言ってトモは、グラスに残っていたウイスキーを一気に飲み干した。

「じゃあ、尚更ハッキリさせるべきだな。それから…あんまり酒ばっか飲んでると、嫁さん見つける前に肝臓やられて死ぬぞ?」

「はーい。気を付けます、パパ。」

トモがおどけて返事をすると、ユウは照れ臭そうに頭をかいた。

「パパはやめろよ…。」




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