幸せの定義──君と僕の宝物──
「とにかく…オレはまだ眠い。もう少し寝かせろ。」

「じゃあハルも一緒に寝る。大人しくしてるからいいでしょ?」

「あー…もう好きにしろ。寝込み襲うなよ。」

「はーい。我慢する。」

「我慢って…。」

リュウが寝返りを打って背中を向けると、ハルはリュウの背中にしがみついて、ぴったりと寄り添った。

(寝れねぇっつーの…。コイツ…体だけは大人になってるって自覚ねぇのか?それともわざとか?まぁ…ハルに何されても欲情したりしねぇけどな…多分…。)



しばらくすると、リュウが寝息をたて始めた。

ハルは愛しそうにリュウの背中に頬をすり寄せて、両手でギュッとリュウの体を抱きしめた。

「だーい好き…。」

甘えた声で小さく呟いて、額をリュウの背中に押し当てる。

「アユミって誰よ…。」

ハルの小さな問い掛けに、リュウから返ってくるのは静かな寝息だけだった。

(恋人とか…いるのかな…。)

どんなに頑張っても、18も離れた歳の差が縮まる事はない。

血が繋がっていないとは言え、リュウにとって自分が“姪のハル”でしかない事も、ハルはいやと言うほどわかっている。

リュウは身内としての愛情で、小さな頃からハルを大切に見守り、かわいがってきた。

どんなに大人になったとしても、リュウはきっと子供扱いをするのだろうとハルは思う。

また寝返りを打って、向かい合ったリュウの寝顔を、ハルはじっと見つめた。

そして、リュウを起こさないようにそっと、ほんの一瞬だけ、その柔らかい唇で初めてリュウの唇に触れた。

「リュウトのバカ…。もう昔みたいに子供じゃないもん…。」

ハルはため息混じりに小さく呟いて、大好きなリュウの広い胸に顔をうずめた。

(こんなに好きなのにな…。)



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