幸せの定義──君と僕の宝物──
再び目を覚ましたリュウの目に、リュウに腕枕をされて眠っているハルの姿が映った。

(な…なんだこれ…。いつの間に…。)

一瞬驚きはしたものの、ハルのあどけない寝顔を眺めて、リュウは微笑んだ。

(こうしてるとかわいいもんだな…。よく寝てるし…たまには甘やかしてやってもいいか。)

リュウは気持ち良さそうに眠るハルの頭を、大きな手で愛しそうに撫でた。

優しいその手の温もりに、ハルは眠りながら微笑んだ。

「とーちゃん…だーい好き…。」

寝ている時でさえ幼い頃から変わらないハルの言葉に、リュウは苦笑いを浮かべた。

(まったく…。まだまだガキだな。)

ハルの寝顔を眺めながら、リュウは自分の若かった頃を振り返る。

ハルと同じ歳の頃、リュウは高校へは行かず、サツキの美容室を手伝いながら、美容師になるために通信の美容学校で勉強していた。

いつもまわりには適当に体を重ねるだけの相手が何人かいて、リュウも相手の女の子たちも、お互いにそれ以上を求めなかった。

(中学時代は激ヤンだしな…。今更だけど…よく考えたら荒んだ少年時代だった…。好きでもなんでもねぇ女と、しょっちゅうやりまくってたとか…。思春期の男なんて、ホントロクなもんじゃねぇな。)

中学から別の学校に行ってずっと会わなかった彼女と店で偶然再会した頃、まだ幼かったハルが将来ヤンキーになったらどうしようと、リュウはいつも心配していた。

(今のところ、まともな女子高生だな。まぁ…ちょっと大人ぶってると言うか…マセてるとは思うけど…同じ歳の頃のオレに比べたらかわいいもんだ。)


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