幸せの定義──君と僕の宝物──
もしハルが、いい加減な男に遊ばれて捨てられるような事があったら…と、考えるだけで腹が立つし、絶対許さないとリュウは思う。

(オレみたいなつまんねぇ男じゃなくて、まともないい男見つけろよ。真面目で優しくて…ハルだけを想って大事にしてくれるような…。)

リュウは何度もハルの頭を優しく撫でた。

もう少し大人になって、いい男に出会って恋をすれば、ハルはきっと自分から離れて行くだろうと思うと、ほんの少し寂しい気もする。

(こういう事を考えるあたり、オヤジっぽいんだよ…。ハルの結婚式…オレ絶対泣くな…。)


ロンドンに行く前、ハルがまだ幼かった頃は一緒に暮らしていて、“ハルがおっきくなったら絶対結婚しようね”と毎日言われていた。

10年経って帰国した時には、ハルは中学1年生になっていた。

ロンドンにいる間は姉のルリカがハルからの手紙や写真を送ってくれたり、ハルが少し大きくなるとメールや電話をしてきたので、たまに話したりはしていた。

ロンドンにいる間は一度も実家に帰らなかったので、ハルに会うのも10年ぶりだったが、時々連絡をとっていたからか、大きくなったハルに不思議と違和感を感じなかった。

帰国してからはハルが会いたいと言うので、何ヵ月に一度かは実家に帰る事もある。

たまにしか会わないのに、ハルの気持ちは幼い頃から変わらない。

誰よりもまっすぐにリュウを大好きだと言って慕ってくれるハルをかわいいと思う反面、ハルが大きくなるに連れて、このままでいいのかとも思う。

ハルには幸せになって欲しい。

リュウのその願いも、昔から変わらない。

ただ、ハルを幸せにするのは、自分以外の、ハルを大切にしてくれる男であって欲しい。

この先何年経っても、自分とハルが身内であると言う事に変わりはないのだから。




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