幸せの定義──君と僕の宝物──
「いや…。オレの目で見て確かめたわけでもねぇしな。オレもそれをどうするか悩んでんだよ…。やっぱ伝えるべきなのかな…。」

「でも…黙って産んで育ててるって事はさ…彼女はトモに知られたくないのかも…。」

「どうだろうな…。中途半端に知っちまってさ…オレはどうすりゃいいんだ?」

「えーっ…。オレにもわかんねぇよ…。」

当事者でない男二人ではどうする事もできず、ユウとリュウは黙ってビールを飲んだ。

二人はタバコ吸いながら、しばらく物も言わず考える。

「……ほっとくわけにもいかねぇだろ…?」

沈黙を破ったのはリュウだった。

「それもわかんねぇよ…。そもそも、確かにトモの子だって証拠もないし…。トモの子だったとしてもさ、オレらがどう思ったって、そっとしておくのが二人にとっては幸せなのかも知れないし…。」

ユウは立ち上がって冷蔵庫から新しいビールを取り出し、リュウのグラスに注いだ。

「トモは、今の彼女に会うのが怖いって…。」

「怖いって…どういう意味だ?」

ユウは自分のグラスにもビールを注ぐ。

「リュウもずっと彼女とは会ってないならわかるかも知れないけど…。もし会っても、昔とは別人みたいに変わってたりとか…今の自分にガッカリされたらどうしようとか…それにやっぱり、自分の事なんか忘れて幸せになってるかもとか…。」

「オレは…そんな事、考えた事もねぇ。」

「そうか…。リュウは自分に自信があるのかな…。」

「あ?そういうわけじゃねぇけどな。」

「トモさ…変わっただろ?」

リュウは少し考える。

「あぁ…そういや、アイツらもそんな事言ってたな…。それがどうかしたのか?」


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