幸せの定義──君と僕の宝物──
「いつかまた彼女に会えた時に自分を選んで欲しかったから…リュウみたいになりたかったんだってさ…。もう…彼女をリュウに取られたりしないように…。」

思いもよらないトモの隠していた本心を聞かされたリュウは、呆然と手元を見つめた。

「なんだよトモのやつ…。そういうとこは昔のまんまじゃねぇかよ…。」

リュウはテーブルの上でこぶしを握りしめながら小さく呟いて、タバコに口をつけた。

ため息混じりに吐き出したタバコの煙が目に染みて、リュウは目元を押さえた。

「トモはオレの事、一度も責めなかったんだよ…。オレは…トモの彼女とやった…。それが原因で二人は別れた…。」

「でも、リュウはその子がトモの彼女だって知らなかったんだろ?」

「それはそうだけどな…。そんなの理由にならねぇよ。オレは間違いなく、彼氏から奪ってやろうと思ってアイツを…アユミを抱いてたんだから…。」

目元を押さえてうつむいたまま、リュウは絞り出すように言葉を続けた。

「トモは全部知ってたくせに、11年もオレには黙ってた…。バカだろ?怒ってぶん殴ればいいのに…。」

ユウはリュウの言葉を聞きながら、トモの言葉を思い出していた。

(トモの言った通りだな…。)

「トモがさ…リュウに事実を話した事、後悔してるって。」

「え?」

「リュウが…今でも過去の事をすっげぇ後悔して自分を責めてるの、わかってるからだよ。」

「それ…トモが言ったのか?」

「うん。でもオレからしたらさ…リュウもトモも同じだよ。アイツは悪くない、オレが悪かったんだって…お互いにそう思って、後悔して自分を責めてる。」

ユウはタバコに火をつけ、煙を静かに吐き出して、愛しそうに笑った。


< 76 / 241 >

この作品をシェア

pagetop