幸せの定義──君と僕の宝物──
「大きくなったら変わるもんだと思ってたんだけどな…。今日、こっちに戻る前にな…オレと会えないと寂しいって言うから、だったら早く彼氏作れって言ったんだよ。」

「そんな事言ったのか?」

「まぁ…いつもの事だと思ってさ。でもな…ハル、急に泣きだして……キス、された…。」

「えっ、マジか?!」

「ああ…。“リュウトのバカ!!”だってさ…。いつもはそんな呼び方しねぇのに…。」

リュウはタバコに口をつけて、吐き出した煙を目で追った。

「オレは…ハルの事、まだまだガキだと思ってたし…好きだのなんだの言っても、本気でそう思ってるわけじゃねぇだろって…。それにいくら血が繋がってないとは言え、身内には違いねぇだろ?」

「まぁ…そうだよな。」

「オレはさ…ハルには幸せになって欲しいんだよ。オレみたいなつまんねぇ男じゃなくてさ…真面目で優しくて、ちゃんとハルだけを想って大事にしてくれる男とな…。」

リュウの言葉を聞きながら、ユウは以前レナに言われた言葉を思い出していた。

「それはさ、リュウの思うハルちゃんの幸せだろ?」

「え?」

「オレも前にな…レナに言われたんだ。人の幸せを勝手に決めたらダメだって。ハルちゃんにはハルちゃんの思う幸せがあるんだよ。」

「そっか…。」


リュウから聞いたハルの話は、レナに片想いをしていた自分の若い頃を思い出させて、ユウは小さくため息をついた。

「リュウトのバカって泣いてキスした時のハルちゃんの気持ち…オレはわかるよ。」

「わかんのか?」

リュウは意外そうに尋ねた。

「いつまでも子供の“姪っ子のハル”としてじゃなくて…リュウを好きな今の自分を、ちゃんと見て欲しかったんだと思う。」


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