幸せの定義──君と僕の宝物──
「なんでそう思う?」

「オレも同じような事があったから。オレとレナは物心つく前からの幼なじみで、誕生日も一緒で…双子みたいに、いつも何するのも一緒でさ。レナの事が好きだって気付いた後も、フラれて一緒にいられなくなるのが怖くて、好きだってずっと言えなかった。」

「ユウもそんな時があったんだな。」

「うん。でもさ…クラスの女子がレナにオレへのラブレター預けて、それをレナがオレに渡しに来た。こんなに好きなのになんでだって腹が立ってな…好きだって言えなかったくせに、もう全部壊してやれって思って…力ずくで自分のものにしようとしてさ。レナを押し倒して無理やりキスしたけど…泣いて拒まれて、また悔しくてひどい事言って…。」

「そんなに好きだったのに、なんで片桐さんを忘れてロンドンに行こうと思ったんだ?」

「オレがレナを守るんだって思ってたのに、レナを傷付けてさ…。レナが望むならもういいやって、ラブレターの子と付き合ったりさ、それ以外の子とも誘われたら誰彼構わずやって…。でもレナをあきらめるつもりがどんどん苦しくなって…耐えきれなくなって、逃げたんだ。」

「そうか…。」

「あんまり近過ぎるとさ、それまでの関係を変えようとするのには、勇気がいるんだよ。」

リュウはユウの話を聞きながら、ぼんやりとハルの涙を思い出していた。

ハルの気持ちに気付いていても、その気持ちに応える事はできないからと気付かないふりをして、わざと冷たい言葉を投げ掛けた。

ハルの事を“まだまだガキだな”とは思いながらも、いつまでも小さかった頃のハルではない事も、ハルが恋をしてもおかしくない年頃である事もわかっている。

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