幸せの定義──君と僕の宝物──
マサキから聞いていた辺りまで来ると、トモはスーパーの駐車場に車を停めた。

「オイ、マサキ。そろそろ起きろよ。」

トモはマサキを優しく揺り起こした。

「うーん…。母さん?」

「誰が母さんだ。トモだよ。」

「あっ、そうだった…。ここは?」

「オマエんちの近くのスーパーだろ。こっからどう行くんだ?」

トモはマサキの道案内で車を走らせ、マサキの住んでいると言うマンションの前に車を停めた。

「路駐はまずいな。近くにコインパーキングあるか?」

「あるよ。そのすぐ裏。」

「って…その前に、家の人はもう帰ってんのかな?」

「土曜日だし、母さんならもう帰ってくる頃だと思う。」

「じゃあ、とりあえず車停めるか。」

コインパーキングに車を停めたトモは車を降りて助手席のドアを開け、マサキの足に触った。

「あー…ちょっと腫れてんな…。痛むか?」

「少し。」

「よし、家までおぶってやる。無理するとひどくなるからな。」

トモがマサキをおんぶして歩いていると、マサキが照れ臭そうに笑った。

「なんか…赤ちゃんみたいで恥ずかしいよ。」

「恥ずかしがるような歳でもねぇじゃん。怪我してんだからしょうがねぇだろ?」

「おんぶなんか…ちっちゃい頃に母さんとばあちゃんにしてもらった事しかないから。」

「父ちゃんはしてくれなかったのか?」

トモが何気なく尋ねると、ほんの少し間があってから、マサキがポツリと呟く。

「オレ父ちゃんいないから。生まれた時からいないんだって。」

「そっか…。じゃあ遠慮なくおぶられてな。」

「うん!!」

(マサキの母親はシングルマザーか…。)


< 85 / 241 >

この作品をシェア

pagetop