幸せの定義──君と僕の宝物──
それから慌てて軽く朝食を済ませた二人は、ユウの運転で掛かり付けのレディースクリニックへ足を運んだ。

いつもは散歩がてら10分程度の道のりを歩いて行くのだが、今日は状況が状況だけに車で来たのだ。


このレディースクリニックは女医が開業していて、1階で外来患者を診察し、2階には6部屋ほどの病室があり、3階が自宅になっている。

医師が女性である事や、この病院で妊娠を告げられた事、自宅から近く、夜中や早朝でもすぐに主治医に対応してもらえるので安心だと、二人でこのクリニックでの出産を決めた。


クリニックに着くとまだ診察時間まで時間があるせいか、いつもは明るく和やかな待ち合い室は静かで薄暗く、外来診察のスタッフもまだ一人もいなかった。

その代わり、主治医の山田先生が診察室の前で待っていた。

「片桐さん、早速だけど内診室に入って。ご主人はこちらでお待ちくださいね。」

レナは不安そうな顔でユウをチラリと見た後、山田先生に付き添われて診察室の中へ入って行った。

(大丈夫かなぁ…。たいしたことなければいいんだけど…。)

ユウは、体調の悪いレナに付き添って初めてこのクリニックを訪れた時のように、心配そうな面持ちで待ち合い室のソファーに身を沈めていた。



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