(短編集)ベッドサイドストーリー・1
美味しいコーヒーと素敵な本、面白い本、綺麗な写真の本・・・それは確かにハッピーな組み合わせだわね、と思った。
彼には会えなかった。だけど、また別の素敵なことを発見できたわ、そう考えて私は一人で頷いた。
まだ、本棚に輝きは戻らないけど。
それでも私は、また今日も素敵な本を探して買って帰ろうって。そう思ってコーヒーを飲み干す。
「ご馳走様でした」
係りの人にそう告げると笑顔まで貰えた。うんうん、何だかいいじゃないの、これも。
私は気を取り直して、自分のいつものペースで本屋を回ることにした。雑誌をチェック、新刊をチェック、お気に入りの作家のところで読んだけどまだ買ってはいない本をパラパラとめくって、科学雑誌も立ち読みをする。
気が済むまでそうして本屋を楽しんで、家に帰った。
ちょっとガッカリはしていたけれど、まあいいか、そう思えるくらいには立ち直っていた。
行けば出会えると思い込んでいたのがおかしいのだ。あそこで働いているならともかく、そうでもないのに頻繁に本屋に出入りする暇な人はそんなにいないだろう。私だってそうなのだから。
そう思って、私は自分の日常に戻る。
いつものように、朝起きてテレビを観ながら支度をし、会社に出勤して、上司にうんざりしたり新人さんを可愛がったりして帰宅時間を迎える。
そしてちょっと期待しながら駅前の本屋に寄る。そのドキドキは結局1ヶ月ほど持続した。
彼にすすめて貰った本は、私の鞄の中からは出されたけど、部屋の真ん中においてある本棚の一番目立つところに飾られている。たまに家族が何か読むものない?ってくるのには勧めたりして、私だけでなく、家族までその本のとりこになったのだった。