(短編集)ベッドサイドストーリー・1
遅れるとかでなく、忘れてました~!私は焦って半分の顔のメイクも済ませる。そして、鞄を引っつかんで家を飛び出した。
心が弾んでいた。あの出会いを彼が覚えてくれていたこと、それに偶然それを発見できて、メールを送れたことが、私の中でふつふつと発酵して喜びメーターを押し上げていく。
あの人に、お礼を伝えたかった。それは一方通行かもしれなくてもちゃんとやり遂げることが出来たのだ。私はそれだけで、既に笑顔になっていた。
友達ともテーマパークも、思いっきり楽しんだのだ。
人生秋晴れ!そんな状態だった。
夜は友達とそのままワインバーまで流れ、しこたま飲んで笑い、終電での帰宅となった。
空きまくった電車の中で、私は今日一日見ないようにしていたスマートフォンを鞄から取り出す。
酔っ払っていることで、理性が弱くなっている今しかないって思っていた。反応がなくてもこの酔いなら笑えるかもって思って。
フェイスブックを開ける。アルコールの影響で若干霞んだ視界の中には、メッセージ有り、の文字。
途端に背筋が伸びた。
ほとんど人のいない車両の中で、やたらとキッチリ座った状態で、私は画面を指で触る。
出てきた文字の羅列を目で追った。
『まさかの、パントマイムの人?結局買ってくれたんだね、ありがとう。気に入ってくれたようで僕も嬉しいです』