(短編集)ベッドサイドストーリー・1
飲み終わった紅茶のパックを片手で握りつぶして、僕はとにかく頷くだけにした。だって、答えようがない問いだったものだから。
君は何かに対して不満そうにふんと鼻を鳴らして言ったんだ。
「わざわざ霞むくらい遠い向こうを見ようとしたりしてさ」
こんなに近くに、目の前に幸せだって探しものだって、あるのにねえ?
そう言った君は、翌日に姿を消してしまった。
僕に一枚の紙を残していた。
そこには青いボールペンで、君の細い文字。
───────────恋に破れた天使は、どこへ行くでしょうか?
・・・さっぱりワケがわかりません。
僕は結構頑張ったと思う。
あの子の友達や家族や、その他知り合いにも行方を尋ねたりしたしさ。まあ、君の家族は冷たかったけどね。娘のことはもう知りません。放って置いて下さいって言われちゃったよ。君のお母さんはかなり疲れた顔をしてた。そして僕に聞いたんだ。
「あなたはあの子の何?」
僕はちょっと考えた。何って・・・何だろう。でもそんな、全部が全部言葉ですっきりと説明できるものなのだろうか?
僕はとりあえず、無難に「友達です」と答えておいた。正しくはいくつかのバイト先で一緒だったんです、なのだろうけれど。とにかく君のお母さんは胡散臭そうに僕を見て、ドアをバタンと閉めてしまったよ。でもまあ、いいか。だって仕方ないしね。
僕にはお金がなかったけど、時間がたくさんあった。だから探すことにしたんだ、君をね。どうしてかって聞かれてもちょっと困るけど。うーん・・・暇だったから?というと違うかな。