(短編集)ベッドサイドストーリー・1
でもそうしようって思ったんだ。君の書いて残した紙切れを見て。僕は、この子を探さないとって。
胸にぐうーっと、強くそう感じてしまったから。
とにかく暗号だよ、誰のこと、天使って。それに恋に破れたとか何の話?だって君に恋人は居なかったし、もしいたとしたなら僕でなく彼氏に残すだろうって思ったんだ。誰かに恋をしていて、ふられたとか?だから急にバイトに来なくなったのかな?それでマネージャーはかんかんに怒って、君を首にしてしまったんだ。
それにしても、僕は君とそんな会話をしていなかったよね?
頑張って、君と交わしてきた色んな会話を思い出したりしてみた。行った場所、買ったもの、何か、君の残したあの紙切れのヒントになるようなものはあったかな?って。
普段使わない頭を使ったからとても疲れたね。これはかなりしんどいかも、そう思ったけど、まあ乗りかかった船・・・というよりは乗り込んだ船だからね、僕は航海に出ることにしたんだ。
手がかりは一つしか思い浮かばなかった。それは、君が僕にくれた唯一のもの、絵葉書だ。
ある時君が一枚の絵葉書をヒラヒラさせながら僕のところへやってきて、言ったんだったよね。素敵な場所だと思わない?って。
ブルーの小さな湖が、白い棚田のような場所にいくつもある風景だった。トルコ共和国にある、パムッカレという場所らしい、とあとで判った。君はあの時僕に絵葉書を押し付けて、さっさと行ってしまったから、僕がまだその絵葉書を持っている。
友達とバス旅行で行ったことあるよ、そう教えてくれた女友達がいて、僕はぼんやりと思ったんだ。
君は、ここにいるかもしれないって──────────────