(短編集)ベッドサイドストーリー・1
確信があったわけじゃない。
勿論、確率にしたら凄く低い数字が出たはずだ。
だけど僕は小さなバックパックに荷物をまとめて、出かけたんだ、トルコへ。貯金を下ろして、アルバイトは辞めてしまって、家族にはツアー旅行だよって嘘をついて。
いなかったらどうしようとか、いや、それよりもまず行方不明になった君を外国でどうやって探したらいいのだろうとか、ほとんど考えなかったな。
無謀だったって今は思うよ。地理も不案内の、言葉も通じない国で。一人で一体、どうするつもりだったのか。
だけどとにかく出発したんだ。空を飛んで、僕は君を探しにいく。
ずっと夢の中にいるような、目の前の現実がしっかりと胸の中に入ってこれないような日々を過ごしたよ。
日本語を話せる人を探して教えて貰いながら、僕は外国の中をヨロヨロと進んでいた。
でも笑顔だったよ。何となく、雰囲気があったんだよ。
君がいそうな、そんな気がしたんだ。
アジアの端の国から、アジアの端の国まで行った。広いトルコの中を、長距離バスにのって僕は動いていく。砂漠ほどではない砂でいっぱいの地帯を進んで、たまに小さな町が見えて、それを繰り返して水の都へ。砂で汚れて霞むバスの窓の向こうには、君が言っていた、道があったよ。
どこまでも、どこまでーも、真っ直ぐな、一本道。
山も川も岩もあるのに、地形を全部無視したような馬鹿みたいに真っ直ぐな一本道。