(短編集)ベッドサイドストーリー・1
僕はぽかんとしていた。
今、君は僕を好きだったって言った?何だか耳の中にまで砂風が入り込んでしまったみたいで、よく聞こえなかったよ、そう思っていた。
君はやっぱりニコニコ笑って僕を振り返る。
「だから、あなたに来て欲しかったの。それがまさか叶うだなんて思ってなかったわ!」
そして僕を誘ったんだ。ほら、行きましょう。あれを見なくちゃって。
手を引いて、一緒に走った。
僕はリュックが落ちないように何とか手で押さえて、駆けてゆく君の後ろから叫んだよね。
「あのメモって―――――――」
ちらっと僕を振り返って、太陽に目を細めた君がいう。
だから、あたしのことだったんだよ、って。好きになった人に振り向いて貰えない、退屈で死にそうな女の子!天国に―――――――憧れたの。
「だからここに・・・ほら!」
急にパッと視界が開けて、そこは白い世界。
目の前にはパムッカレの素晴らしい景色。
白い岩棚、そこに滔々と流れる豊富な水、水底は明るいブルーに光って、はるか下の街へと注ぎ込んでいるように見える。
天の、水甕みたいだった。