(短編集)ベッドサイドストーリー・1


 最適な相槌。それから、たまにアドバイス。

 だから私は完全に甘えていたといっていい。物理的にではなく、精神的に、彼は私の毎日にとっていなくてはならない存在になってしまっていたのだった。

 住んでいる場所は県の端と端ってくらい離れているので、会うのはたまの休日だけ。だけど、いつでも電話で繋がっている、それが私達の絆というか、繋がりなのだ。

 だけど今晩、彼が弱音を零した。

 ────────オレだって、たまには泣きたくなるんだよ。

 私が今日の「やるだけ無駄だわ」会議について、ほんと泣きたくなっちゃった、と不満を口にしていた時だった。あの驚き。きっとあの一瞬、私の口は大きくあんぐりと開いていたはずだ。

 泣きたくなる?晃一が!?ちょっとちょっと~!何があったのよおおおおおお~!

 きっと彼は彼の部屋の真ん中に置かれたカウチの上で、お気に入りの部屋着をきてビールか何かを飲んでるのだろう。そして、自分だって凹んでいるのに私の話を聞いてくれたのだろう。

 うぬぬぬぬ!いつもいつでも甘えてばかり、そんな関係がいいはずがない!

 だから私は立ち上がったというわけだった。下へと降りるエレベーターの中でも目をギラギラと光らせて、高く拳を突き上げて。

 待ってて。

 私はキーをまわして車に命を吹き込む。ボロボロとは言いたくないけれど、かなり年期の入った愛車は、ガタンと不吉な音を立ててから仕方ないなって感じで動き出す。

 待っててね、今、会いに行くから。



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