(短編集)ベッドサイドストーリー・1
返答を待ってるような間があいていて、あたしは仕方なく口を開く。
「・・・別に、何かが目的なわけじゃなくて・・・。乾いてる、から」
「は?」
「何て言えばいいか判らない。生活に不満はないけど、満ち足りてないの。それが何か判らないから、見ず知らずの人についていってみようと思っただけ」
「は、あ」
男は正直に首を傾げている。まあそりゃ意味不明だよね。あたしは一人でまた夜空を見上げた。
雲が一面覆っていて、今にも雪が降りそうだった。この気温だったら降るかもしれない、それまでには帰ったほうがいいんだろうな──────────
「つまり」
男の声がした。
「刺激を求めていた俺と、潤いを求めていた君ってわけだね。・・・どっちも難儀だね」
「そうですね」
ぽんと相槌を返すと、それと同時に空から白い玉が落ちてきた。
あ、雪だ。
「ついに降りだしたなー」
隣で手の平を空へ向けながら、男が言う。あたしはその彼に向かって一度御辞儀をした。
「じゃあ、あたしはこれで。帰りま────────」
「よっと」