(短編集)ベッドサイドストーリー・1


 返答を待ってるような間があいていて、あたしは仕方なく口を開く。

「・・・別に、何かが目的なわけじゃなくて・・・。乾いてる、から」

「は?」

「何て言えばいいか判らない。生活に不満はないけど、満ち足りてないの。それが何か判らないから、見ず知らずの人についていってみようと思っただけ」

「は、あ」

 男は正直に首を傾げている。まあそりゃ意味不明だよね。あたしは一人でまた夜空を見上げた。

 雲が一面覆っていて、今にも雪が降りそうだった。この気温だったら降るかもしれない、それまでには帰ったほうがいいんだろうな──────────

「つまり」

 男の声がした。

「刺激を求めていた俺と、潤いを求めていた君ってわけだね。・・・どっちも難儀だね」

「そうですね」

 ぽんと相槌を返すと、それと同時に空から白い玉が落ちてきた。

 あ、雪だ。

「ついに降りだしたなー」

 隣で手の平を空へ向けながら、男が言う。あたしはその彼に向かって一度御辞儀をした。

「じゃあ、あたしはこれで。帰りま────────」

「よっと」


< 66 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop