傍にいて欲しいのは
友人
 私は目を覚ました……。
 心配そうに私を見ている若い男性……。

「大丈夫ですか? バイクに、はねられたの覚えてますか?」

「バイク? ……そう、私、はねられたのね」

「俺がバイトしてる喫茶店の前で」

「あぁ、あの喫茶店のバイトの人よね」

「はい。覚えててくれて良かった。あの、ご家族に連絡しなくて大丈夫ですか?」

「私、一人暮らしだから」

「明日、検査して大丈夫なら帰っていいそうですよ」

「そう、ありがとう。ずっと付いててくれたの?」

 その時、医師が病室に入って来た。

「どうですか? 気分は……。痛みは我慢出来ますか?」

「はい。何とか……」

「彼から聞いたと思いますが、明日、検査をして大丈夫なら退院して構いませんよ。赤ちゃんは残念でしたね。もし出血が続くようなら産婦人科を受診してください。今夜はゆっくり休んでください。何かあったらナースコールを押してくださいね」

 赤ちゃん……?
 
 私が呆然としている間に医師は病室から出て行った。

「すみません。俺を彼だと勘違いされてるみたいで……」
 困惑したように彼は言った。

「あっ、ううん。私の方こそ、ごめんなさい。あの、私のバッグどこかしら?」

「バッグ、あぁ、これですか?」
 ずっと持っていてくれたようだった。

「中に携帯が入ってると思うんだけど」

「俺が開けていいんですか?」

「腕、動かせないみたいだから……」
 点滴に利き手の自由が奪われている。

「あぁ、そうか。じゃあ開けます。ありました。で、どうしますか?」

「左上の電話帳押してもらうと最初に、相崎美香って……。私がこの病院に居る事を伝えて来て欲しいって」

「あぁ、でも話せますよね。俺、携帯持ってますから」

 携帯を頬に優しく当ててくれて……。
 美香に事故の事、来て欲しい事を伝えた。

 三十分も経たない内に、美香はとても驚いた様子で病室に来てくれた。

「莉奈、リナ、大丈夫なの?」

「うん。大丈夫よ。ごめんね、こんな時間に……」

「何言ってるのよ。そんな事、気にしなくていいから」

「じゃあ、お友達も来てくれたし、もう大丈夫ですね。俺、帰りますから」

「本当に、ありがとう」
 そう言うと彼は少し微笑んで、静かに病室から出て行った。

「莉奈の彼?」

「違うの。救急車を呼んでくれて、ずっと付いててくれたの」

「そうなの。病室のドアを開けた時、てっきり彼だと思ったけど……。あぁ莉奈、私、今夜ここに泊まろうか?」

「一人で大丈夫だから。ありがとう」

「本当に? じゃあ私は、莉奈のアパートへ着替えを取りに行って、明日の朝また来ればいいのね」

「ごめんね。よろしくお願いします。美香が居てくれて助かったわ」

「でしょう? だから安心して、ゆっくり眠りなさいね」


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