傍にいて欲しいのは
痛み
コンビニから帰って来た美香と朝なのか昼なのか分からない食事をして、それから他愛も無いおしゃべり。冷蔵庫の残り物で夕食まで作ってくれた。
「心配だから今夜は泊まろうか?」
と言ってくれた美香に
「一人で大丈夫だから、本当にありがとう」
明日はサボれない授業がある美香を引き止められない。
「何かあったら、いつでも連絡してよ」
そう言い残して帰って行った。
夜になっても、あの人からはメールも来ない。急に有給を取ったことだって不思議にも思わないんだ。
会社では黒沢課長と私が付き合っていることは誰も知らない。同じ課の部下と不倫関係だなんて……。あの人の、これからの出世に影響するに決まっている。
私は、あの人の何? ただの遊び相手。考えたくない結論が見えてしまった。
土曜日、日曜日のいつもの休日を挟んで取った有給五日。これで一週間は会社に行かなくて済む。手足のすり傷も打撲の痛みも、キレイに消えてくれるのだろうか?
それよりも今の私は、事故に遭ったことで、その結果失ってしまうことになった気付いてもあげられなかった赤ちゃんのことが心に重く何よりも痛かった……。
それから三日間。何もしないで、ただぼんやりと過ごした。体の痛みやキズは少しずつ治っていくのに心の中の痛みは日を追って酷くなる……。
お願い……助けて。誰でもいいから……。
次の日、お天気の良さに誘われて、久しぶりに思い切って外に出た。
街を散歩しながら思い出した。そうだ。あの喫茶店に、お礼に行こう。美味しいと評判の和菓子屋さんに入って、キレイに箱に詰めて貰った。
和菓子、お好きだったら良いけれど。そんなことを考えながら歩いていた。
喫茶店まで行くとバイトの彼が外の掃除をしていた。すぐに私に気付いてくれて
「あっ、もう大丈夫なんですか?」
「はい。本当にありがとうございました。きょうはお礼に伺いました」
「お礼だなんて、よかったのに。さぁどうぞ入ってください。もう掃除、終わりますから。マスター」
ドアを開けてくれて
「こんにちは。先日は、お世話になりました。お礼が遅くなって、すみませんでした」
「とんでもない。私は何もしていませんよ。全部、彼の指示に従っただけですから。マスター、救急車ってね」
そう言って笑った顔は、まるで少年のようだった。たぶん四十代後半くらいだと思うのだけれど。
「あの、これ、お口に合うのかどうか分かりませんけど……」
「おっ、あの人気の和菓子屋さんのですね。大好物なんですよ。コーヒー入れますから、どうぞ掛けてください」
「ありがとうございます」
私はカウンター席に腰掛けた。
「心配だから今夜は泊まろうか?」
と言ってくれた美香に
「一人で大丈夫だから、本当にありがとう」
明日はサボれない授業がある美香を引き止められない。
「何かあったら、いつでも連絡してよ」
そう言い残して帰って行った。
夜になっても、あの人からはメールも来ない。急に有給を取ったことだって不思議にも思わないんだ。
会社では黒沢課長と私が付き合っていることは誰も知らない。同じ課の部下と不倫関係だなんて……。あの人の、これからの出世に影響するに決まっている。
私は、あの人の何? ただの遊び相手。考えたくない結論が見えてしまった。
土曜日、日曜日のいつもの休日を挟んで取った有給五日。これで一週間は会社に行かなくて済む。手足のすり傷も打撲の痛みも、キレイに消えてくれるのだろうか?
それよりも今の私は、事故に遭ったことで、その結果失ってしまうことになった気付いてもあげられなかった赤ちゃんのことが心に重く何よりも痛かった……。
それから三日間。何もしないで、ただぼんやりと過ごした。体の痛みやキズは少しずつ治っていくのに心の中の痛みは日を追って酷くなる……。
お願い……助けて。誰でもいいから……。
次の日、お天気の良さに誘われて、久しぶりに思い切って外に出た。
街を散歩しながら思い出した。そうだ。あの喫茶店に、お礼に行こう。美味しいと評判の和菓子屋さんに入って、キレイに箱に詰めて貰った。
和菓子、お好きだったら良いけれど。そんなことを考えながら歩いていた。
喫茶店まで行くとバイトの彼が外の掃除をしていた。すぐに私に気付いてくれて
「あっ、もう大丈夫なんですか?」
「はい。本当にありがとうございました。きょうはお礼に伺いました」
「お礼だなんて、よかったのに。さぁどうぞ入ってください。もう掃除、終わりますから。マスター」
ドアを開けてくれて
「こんにちは。先日は、お世話になりました。お礼が遅くなって、すみませんでした」
「とんでもない。私は何もしていませんよ。全部、彼の指示に従っただけですから。マスター、救急車ってね」
そう言って笑った顔は、まるで少年のようだった。たぶん四十代後半くらいだと思うのだけれど。
「あの、これ、お口に合うのかどうか分かりませんけど……」
「おっ、あの人気の和菓子屋さんのですね。大好物なんですよ。コーヒー入れますから、どうぞ掛けてください」
「ありがとうございます」
私はカウンター席に腰掛けた。