school caste
関東梶宮中学校、2年2組。
生徒数は28で、男女ともに14人。
一見賑やかで、仲が良いと評判なこのクラス。
だがそれは表向きで、
裏の顔はそのクラスの生徒しか知らない。
スクールカーストがあることを、上級階層の人が上手く隠しているから。

私の名前はタカナシ。
スクールカーストの真ん中
中級階層の一人。
役目は 大きく分けて三つ。

Ⅰ『従順』…自分よりも上の階級の人の命令を誠実に聞く

Ⅱ『無知』…上の階級の人の引き立てるために馬鹿のふりをすること

Ⅲ『沈黙』…クラスでの階層社会のことは一切他言してはならない
上の階級の人の行動に口出ししないこと

中級階層の上は少人数で構成される上級階層があり、
一方下は一番底辺の下級階層。

実は私が中級についたのはつい2ヵ月前の7月のことだ。
それまでは一番底辺の下級に一人いた。
下級の役目は主にいじめられっ子。上級階層の子や、その上の絶対権力者である王子とお姫様の醜いお人形。
クラスのいらない子で、生徒を通じた悪質な噂によって教師にまでも軽視される者だった。
地味な身なり、物静かな性格。
他にも様々あるが、いじめられる要因は沢山あっただろう。
罵倒を浴びせられ、散々痛め付けられたせいなのか、自分の短所は幾つも挙げることができる。
自分はいじめを受けて当然の人間だ。
生きてても仕方のない人間だ。
そうして自分の立場を自覚してその場をしのんだ。
7月、ある子が転校してきた。田舎から来たような、素朴な雰囲気な女の子。
方言が恥ずかしいのか、クラスメートから距離を置いていた。
その行動が、上級階層の人の品定めに大いに関わる。
気づかない間にあの子はびりっけつ。
私は中級階層の一員として、クラスメートの輪に入った。
その時にはもう、私の中では人間としての感情は無かった。
ただの空っぽな人形で、転校してきた女の子がいじめを受けているのを見ても、何も感じなかった。

「タカナシ……さん、ねぇ……助けて……」

夢の中で、彼女が何度も私に手を伸ばして助けを求めてくる。
仮にその時手を掴めたとしても、それはただの空想。現実にはならない。
目が覚めている間に彼女が手を伸ばしても、掴もうとも思わない。傍観しているだけ。
かつて自分が彼女の立場にあったとき、みんながしていたように。
私は中級階層の人間。王子とお姫様の忠実なしもべ。
この階級制度の中で生きる醜いお人形。
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