school caste
「ほら、さっさと立ちな、メグミ!」

上級階層のリーダー、アキがいじめられっ子にがなりたてる。
いじめられっ子、メグミは震える体を押さえ、落書きが施された机の隣にしゃがみこんでいた。
回りのクラスメートはそれを見てクスクスと笑っている。
転校してからかれこれ2ヶ月、彼女は彼らからひどいいじめを受け続けている。
初めは無視から。
その次は本人にも聞こえる陰口。
その次は嫌がらせ。
最後に暴言・暴力。

メグミは豹変していくクラスメートに震えた。怯え、すすり泣き、抗おうとした。
だが味方はいない。
いたとしても、王子とお姫様に反抗なんて出来ない根性なし。
偽善者はずっと黙って、ただ彼女が傷ついていくのを見ているだけ。
私という見せしめがあったから学習しているのだ。
決して自分もそのような目には合いたくないから。
私もそう。二度とあの日には帰らない。
帰りたくないから、逆らうなんて馬鹿げた真似はしない。
良心は死んだ。
人としての感情も死んだ。
人でない私には何も出来ない。


「タカナシ、タカナシちゃん。」

袖が軽く引っ張られ、私は呆然としたまま振り返る。
そこにはいじめの傍観者、どちらかといえばギャラリーのお姫様が席に座っていた。
その称号の通り、彼女はとても愛らしい容貌だ。まるでお人形が命を吹き込んだような美少女。そして完璧なまでの秀才で、学級委員長。
唯一性格には恵まれなかったようだけど。

「どう?中級階層の生活には慣れた?」
愛想を含んだ笑顔で、話しかけてくる。
私は何もない表情で、それに答えた。

「うん。もう、すっかりね。」

「それは良かった!」

幼女のようにキャッキャッと笑い、お姫様は私の手を小さく握る。

「これでもう私たちはお友だち。これからも仲良くしていこうね。」

「うん。」

お姫様の言葉はまるでシャボン玉。
嘘か本当なのか漂って、何かが起こればすぐに弾けてしまう。
だから彼女の言うことは戯れ言。何を言おうが深い意味はない。
ただ彼女の言葉は彼女の本性を覆うもの。
愛らしい姿をしていながら、卑劣に人をいじめ倒す。
ここだけの話、彼女のせいで死んだ生徒がいるんだとか。
真相は彼女の父親がもみ消してしまったから分からない。
ご想像の通り、彼女は美人かつお金持ち。
学校で良い顔をしながら好き勝手出来るのもそのおかげだ。
ちなみに私のいじめもそうやって隠蔽されている。
彼女は憎い。だが私に仕返し出来るような力はない。
いつかは彼女の名前が暗転して、お姫様と呼び服従することになる。

メグミの泣き声が聞こえて、私は教室から出ていった。
せめて、この手だけは汚れてしまわないように。
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