school caste
球技大会当日。
この日は今まで無関心だった連中がいきなり団結しようとする、気色悪い日。
会話すらしない奴等と円陣を組んで、ユウショースルゾーと馬鹿みたいに叫ぶ本当に嫌な日。

女子でプレーするのは15点マッチ、クラス同士3チーム戦のバレー。
学年対抗で、総当たり戦。
1回戦で隣の1組。二回戦で飛んで4組。
3回戦では一番のライバル、3組と戦いを繰り広げる。
全学年が体育館に集中しコートを使うので、試合合間の休憩時間は長い。
その間でいじめが繰り広げられることを思えば吐き気がする。

「頑張ろうね、皆。」

お姫様の高らかな声に皆は答えた。
オオー!っと大声で気合いを入れて、いざ試合に挑む。

1回戦は大会開始まもなく。五分間円陣パスの練習を行ってからの試合となる。

上級階層の人は楽しそうに、同じ階級内の子だけでパス回し。
残りの私たちはつっ立って見ているだけだ。
何もしないまま四分が経過した。
その時初めて階級外の生徒にパスが回される。
標的はメグミ。
慌ててレシーブの体勢に入るが、わざと高めに打たれたボールはすぐに彼女の頭上を通り過ぎていく。
ボールは円陣から大きく外れ、別のコートに入ってしまった。
打った本人、上級階層のリーダーアキがゲラゲラと笑う。

「ダメじゃんメグミ!あんだけパスの練習しとけって言ったのに!」

メグミは大声でごめんなさい、と叫ぶ。

「謝る間があったらボール取りに行けよ!練習時間が少なくなるじゃんか!」

メグミは走って別のコートに入っていく。
幸い試合は開始していなかったものの、円陣パス中の人にとっては迷惑極まりない。
ごめんなさい、ごめんなさいと謝り続けながら、彼女は人を掻き分けてボールを取る。
それを見た上級階層の少女たちは大笑いだった。
メグミはやっとのことでボールを持って戻ってきたが、その瞬間終了の笛がなる。
アキが大きく舌打ちをし、お前のせいだぞ、とメグミの肩を突き飛ばした。
メグミは口を噛み締めながら、素直にアキの罵倒を聞き入れる。
試合は開始。
早くも乱れるチームワーク。
お姫様とメグミのチームからのスタートだった。

しかし、意外なことに何も起きなかった。
見事とも言えるお姫様と上級階層運動部のファインプレーで、初戦はすぐに勝ちで終わる。
それもそのはず。メグミの見せ場を奪ったからだ。
メグミの近くに配置された運動部は、彼女の周辺をキープ。
本来彼女が取るべきボールを全て奪ってしまう。
皆は本気で勝ちに行きたいという思いがあるので、それについては抗議しない。
勝つためには仕方ないと正当化する。
皆見ないふりだ。
チームでハイタッチし合う中一人だけポツンと残されたメグミの姿を。


次の試合をよび掛ける笛が鳴り、お姫様のチームはコートから出た。
私が所属しているチームが代わりにコートに入る。
その時に一瞬だけメグミの表情が見えた。
目を真っ赤にしながら、彼女は必死で涙をこらえていた。
それがどうしても頭から離れられず、試合には集中出来なかった。
しかし一応勝てたらしい。友達がハイタッチを求めてくれる。
それでも表情は晴れないままだった。
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