BLUE‐PRINCE
「……海は、青いよ」
「うん」
「砂浜があって」
「うん」
「潮の匂いがする」
「…………潮の匂い?」
朱架が、頭に「?」マークを浮かべて首を傾げる。
潮の匂い……どうやって説明すればいいんだろうか。
「なんかこう……海だなって匂い」
…………だめだ、うまく説明できない。
潮の匂いなんてとっくに忘れてしまった。
そんな僕の説明を聞いて、朱架はクスリと笑う。
「そっか。分かった気がする」
「……嘘でしょ?」
「あ、バレた?あははっ!」
眉を下げながら笑う彼女。
何でそんなに笑えるんだろう。
僕といて楽しいことなんて、一つもないのに。
「……葵くん、明日もここにきていい?」
空を見上げながら、朱架が尋ねてくる。
なんで、そんなことを聞くんだろう。
「朱架なら、いいよ」
「……ありがとう。あたし、行くね」
朱架は笑って、僕の横を歩いていった。
彼女が飲んでいた、苺ミルクの甘い香りを残して。