BLUE‐PRINCE
自分の方向音痴さを恨みながら走り回っていると、少し向こうに見慣れた人物を発見した。
今でもつややかで黒い髪を垂らし、自販機の前で立っている人物。
人目を引く容姿のその人は……
「母さん!」
「っ!?」
声をかけると、母さんはビクッと肩を揺らして振り返った。
「葵……」
「母さん、朱架は?407は?奏多は?」
「ちょ、落ち着いて。大丈夫だから」
母さんは苦笑いしながら、コーヒーのボタンを押した。
ガタンッと、缶が落ちた音がする。
それを拾いながら、母さんは一つ一つ説明してくれた。
「朱架ちゃんは分娩室にいる。407はこの1つ上の階。奏多は……もうすぐ産まれる」
分娩室?
ということは、もう出産が始まっているということ?
「母さん、その部屋に入れないの?」
「多分、まだ大丈夫じゃないかな。ついさっきそこの分娩室に行ったばかりだから」
「ありがとう」
そうひと声かけ、分娩室とやらに向かった。