BLUE‐PRINCE





──それから、数時間。




相変わらず、分娩室は騒がしい。



「現在時刻は?」


「午後1時34分です!」



室内に響き渡る産声に負けず、助産師さんたちの会話が飛び交う。


……奏多が、無事、産まれた。



「お母様、お疲れ様でした」


「奏、多……」



生まれたばかりの奏多を見た朱架は、汗だくになりながらも笑みをこぼす。



「お父様、どうぞ」



促されるままに、朱架に近づく。


僕を見た朱架はまた笑った。



「葵くん…ありがとう……」



こんな状況でも、一言目に『ありがとう』を言うなんて。


朱架らしい。



「ありがとう朱架。良かった……」



抱きしめたくなる衝動を抑え、手を握る。


朱架はニコッと微笑み返してくれた。



「それではお父様、しばらく外でお待ちください」


「あ、はい」



急かすように助産師さんに追い出され、1つ上の階の、朱架の病室で待つことにした。



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