BLUE‐PRINCE



「嫌がらせ、か……」



ソファーにゴロリと横になりながら、昔のことを思い出す。


あのとき……入学式の日は、父さんが「葵」って呼んでくれた。


あれは本当に、嬉しかった。


居てもいいんだって、言われている気がして。


僕は自分らしく、「南葵」として生きればいい。


そう思った。



でも……奏多が、もし僕と同じ境遇になってしまったら?


そのとき僕は、父さんのように、奏多に上手く伝えられるのか?



『奏多は居てもいいんだ』って……。



奏多には、出来れば……いや、絶対に、辛い思いはして欲しくない。


髪の色が違うだけで嫌がらせを受けるような、こんな時代だけれど。


その中で、辛い思いをせずに生きて欲しい。


「なんで自分ばかり」とか「普通が良かった」だなんて思わないで欲しい。



どうか幸せに……生きて欲しい。



それが、僕の願い。



「どうなるんだろう……」



多少の不安を感じつつも、僕はそのまま眠りに落ちていった…………




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