きみの涙に、名前を。

答えの出せないまま、夏祭りの日になった。父が出発する日も近づいている。

結衣は母に頼み浴衣を着た。いつもはしないメイクもしてみた。

「やっぱり結衣はかわいいわね」

「おっ、かわいいな結衣」

両親にそう言われると照れくさい。

「ねえ、せっかくお父さんが休みなんだから二人でお祭り行ったら?」

「そうね。お父さん一緒に行きましょう!」

「いいな〜!久しぶりだな、母さんと二人で祭りなんて。いつぶりだ?」

「結衣が生まれてからは行ってないわよ。お母さんたちも遅くならないように帰ってくるからね。気をつけて、いってらっしゃい」

二人はにこやかに送り出してくれた。

「いってきます!」

結衣はそんな幸せそうな二人に負けないくらい笑顔で、そう言った。

< 10 / 29 >

この作品をシェア

pagetop