きみの涙に、名前を。
結衣がアメリカに発った後の橋本はひどいものだった。呆然として何も手がつかない。快活な橋本の面影はどこにもなく、もはや橋本の瞳には何もうつっていなかった。
そんな橋本を見かねた親友、ヒロトが橋本に言った。
「いまの蓮を見たら結衣ちゃんは幻滅するだろうな。結衣ちゃんが日本に帰ってきたとき、手放したことを後悔するぐらいすげー男になっとけよ。それでまた結衣ちゃんを迎えにいけばいいだろ?」
ニッと笑うヒロトを見た橋本は、「そうだよな…」とつぶやき、ヒロトに笑い返した。
それを見たヒロトは橋本が立ち直ってくれたことを確信した。
それから橋本は一生懸命勉強した。全ては結衣を迎えにいくため。そしてもう二度と、結衣を離さないため。橋本の心の中に、結衣以外の女の影なんて全くなかった。
それは以前、あんなに結衣との仲を邪魔した七瀬でさえ、結衣には勝てないと悟るほどだった。