きみの涙に、名前を。

「うそじゃない。冗談でもない。結衣を忘れたことなんてなかった。ずっと、高校のころから、俺は結衣だけを愛してる。結衣がアメリカに行ってから、後悔してた。ちゃんと言葉にしなかったこと。もし、結衣に愛してる人がいるなら俺は諦めるよ。でもそうじゃないなら、俺と結婚を前提にもう一度お付き合いしてください」

橋本は結衣に伝わるように、言葉をつなぐ。


「…七瀬さんとは付き合ってないの?」

ビクビクしながら結衣の言葉を待ってた橋本には予想外の言葉だった。

「え?七瀬?」

「うん。七瀬さん」

橋本には結衣の言いたいことが全くわからなかった。なぜなら、結衣がいなくなってから七瀬はつきまとわなくなっていたし、結衣のことしか考えていなかったからだ。

「結衣、俺らが別れたのって物理的に離れたからだけじゃないと思う。お互い言いたいこと、聞きたいことを言葉にしなかったからっていうのもあると思うんだ。だから結衣もちゃん言葉にしてほしい」

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