きみの涙に、名前を。
何も言えず、呆然とする結衣。そんな結衣に橋本は苦笑しながら声をかける。
「ゆ、結衣…いきなり指輪とか気持ち悪いよな…」
すると、今度は焦ったように声をかけた。
「え、そんな泣くほど気持ち悪かった…?」
結衣は橋本に微笑みかけながら、答えた。
「今度は、泣いてるの自覚してるよ」
「橋本くんの今の言葉、告白したときと全く一緒!」
「わたしもずっと、橋本くんがすき!」
橋本はあえて同じ言葉を使った。覚えてないだろうけど、俺には大切な思い出なんだという気持ちをこめて。
だから結衣が覚えててくれて、うれしかった。橋本は結衣の腕を引っ張って抱きしめる。そして結衣は橋本の背中に腕を回した。橋本はより強く結衣を抱きしめて、こう尋ねた。
「朝日奈さん、確認だけど俺の奥さんになってくれる?」
「はい、お願いします」
二人は笑いながら顔を合わせた。周りには様子を見ていた同級生が騒ぎ出す。
ようやく回り出した結衣と橋本の運命。何度も泣いた、どの季節でも泣いていた。その涙もこうしてまた二人が出会えて、一緒になれるなら愛おしい思い出。その全てに名前をつけたら、もっとかけがえのない思い出になるのだろう、と二人は考えるのだった。
【完】