きみの涙に、名前を。
橋本の嫉妬心
「結衣は、俺のこと本当に好きなの?」
橋本は、少し怒気の含んだ声を出した。
「え?橋本くん、どうしたの?」
結衣は突然の問いかけに驚いた。久しぶりのデートだったが、あいにくの雨模様で、今は橋本の家にいる。
「は、橋本くん…?」
ただならぬ雰囲気の橋本の様子をうかがいながら近づいていく。橋本の肩を叩こうとしたとき、ふいに彼はこちらを振り返り、結衣の手をつかんだ。
橋本は少し俯き、何か決意したように視線を上げた。
「さっき……」
「さっき?」
結衣は何かあったっけ、と思いながら首を傾げる。
「駅前で仲よさげに話してたやつ誰?」
橋本の瞳にはいつもの強い意志はなく、弱く少し嫉妬が含まれていた。
結衣はすぐに心当たりがあった。しかしこんな風に接してくる橋本の姿を初めて見て、結衣のいたずら心が疼いた。
「橋本くんは、なんでそんなこと聞くの?」