きみの涙に、名前を。

なかなかふたりで話す時間がとれなくなり、話すのはもっぱらメールでたまに電話をするようになった。

それでも結衣は橋本のことがすきだった。嫌いになれるわけがなかった。

(もし、彼が別れたいと言ってきたらきっぱり諦めよう。それまでは、すきでいてもいいよね…?)




定期テストも終わり、いよいよ夏休みだと周囲が浮かれ始めると、橋本が結衣に来週の夏祭りに行こうと誘った。結衣はとてもうれしかった。てっきり七瀬と一緒に行くかと思ったからである。もちろん、オッケーだと返信した。


ワクワクしてどうせなら浴衣を着たいと思い、母に相談するためリビングに降りた。

「お母さん、来週浴衣着たいんだけど着付けってできる?」

そう言いながら扉を開けると、両親が向かいあって座っていた。そしてなぜか重々しい雰囲気が流れている。

「結衣、ちょっといいか?」

「う、うん…どうしたの?なんかおかしいよ?」

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