きみの涙に、名前を。


「実はな、会社で昇進が決まったんだ」

「え、本当?!すごいね、お父さん!がんばった成果だね!」

「ありがとうな。それで、9月にはアメリカに行かなきゃいけないんだ」

「アメリカ…」

「今、母さんと単身赴任にするか家族みんなでむこうに行くか、話し合っていたところだ」

「どれくらい、なの…?」

「わからない。むこうの責任者を任されることになったんだ。だから少なくとも五年は帰ってこれないと思う」


「……お母さんは、どうしたいと思ってるの?」

「お母さんは結衣の意見を尊重したいと思ってるの。高校を卒業するまでこっちにいて、大学はむこうに行ってもいいと思うし、高校も大学もこっちで進学してもいいと思う。そしたら、結衣が大学生になったらお母さんだけむこうに住んでもいいとも思うしね」

「そっか。少し考えてもいい?」

「もちろんだ。父さんと母さんは結衣の考えを大切にしたい。どんな答えでも受け入れるからよく悩め」

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