有害なる独身貴族
「店長、また違う女の人になってたな。まあ優雅な独身貴族だもんなぁ」
あれを優雅と呼ぶのか。むしろ有害でしょう。
いい年して結婚もしない男。
体だけが売り物みたいな、体のラインを目一杯さらすような格好をした女の人ばかりと付き合う人。
どちらも本気じゃないと分かるような恋愛をホイホイする意味が分からない。
「すぐ振られるんじゃないですか? いつも長続きしないじゃないですか。ていうか、すぐ次が見つかるのが疑問です」
「はは。房野は店長には厳しいよな」
数家さんとの距離は少しずつ縮んではいったように思う。
だけど、彼の私の呼び名はずっと“房野”だったし、並んで歩いたって、肌が触れ合うことは一度もなかった。
彼は私の前では、外交的な笑顔を崩さない。それは、ある意味分かりやすい拒絶だった。
そして彼のその態度に、私が安心していたのも事実だ。