有害なる独身貴族
*
「おはよーございます」
いつもは裏口から入るのに、今日は店の表口を、音を立てないように静かに開けた。
店長に見せようって意気込んで来たはずが、電車に揺られているうちに自信がなくなってきて。
やっぱり帰ろうか駅で散々悩んだ挙句、時間が無くなって店にやってきた今現在。
ギリギリの時間になっちゃったから、もう皆来ているだろう。
やっぱり見せる勇気はしぼんできたから、店長に見つからないように表から入ってこっそり事務所に行って、着替えてしまおうと思ったんだけど。
入った途端、正面にいた上田くんに見つかった。
あわわ、大きな声を出さないで……なんて願いは通じるはずもなく、上田くんは目を見開いて店中に響く声を出した。
「うっわー。房野さん、スッゲ可愛い」
開店準備をしていた数家さんや他のスタッフも気づいて顔を上げる。
「あれ、房野おはよう。今日なんかあるの? オシャレだね」
「な、別に、あの、その」
「予定ないなら俺とデートしましょうよ。スッゲ可愛い」
「バーカ、仕事終わってから、開いてる店なんてあるかよ」
上田くんと数家さんが声高々に話しているので、厨房から店長が出てきてしまった。
「お前ら、うるさ……」
そして私を見て、口をつぐむ。
店長の反応が一番怖い。
そりゃ、選んでくれたくらいだから貶しはしないだろうけど、がっかりされたら私がヘコむよ。怖くて、店長の顔が見れない。
「おはよーございます」
いつもは裏口から入るのに、今日は店の表口を、音を立てないように静かに開けた。
店長に見せようって意気込んで来たはずが、電車に揺られているうちに自信がなくなってきて。
やっぱり帰ろうか駅で散々悩んだ挙句、時間が無くなって店にやってきた今現在。
ギリギリの時間になっちゃったから、もう皆来ているだろう。
やっぱり見せる勇気はしぼんできたから、店長に見つからないように表から入ってこっそり事務所に行って、着替えてしまおうと思ったんだけど。
入った途端、正面にいた上田くんに見つかった。
あわわ、大きな声を出さないで……なんて願いは通じるはずもなく、上田くんは目を見開いて店中に響く声を出した。
「うっわー。房野さん、スッゲ可愛い」
開店準備をしていた数家さんや他のスタッフも気づいて顔を上げる。
「あれ、房野おはよう。今日なんかあるの? オシャレだね」
「な、別に、あの、その」
「予定ないなら俺とデートしましょうよ。スッゲ可愛い」
「バーカ、仕事終わってから、開いてる店なんてあるかよ」
上田くんと数家さんが声高々に話しているので、厨房から店長が出てきてしまった。
「お前ら、うるさ……」
そして私を見て、口をつぐむ。
店長の反応が一番怖い。
そりゃ、選んでくれたくらいだから貶しはしないだろうけど、がっかりされたら私がヘコむよ。怖くて、店長の顔が見れない。