有害なる独身貴族
自覚……ねぇ。
数家さんは、店長が私の事好きみたいな言い振りするけど、それはどうなんだろう。
好きなら、数家さんを勧めるようなことする?
「俺、一回言ってやったんだよね。そんなに心配なら自分で幸せにしてやったらいいじゃないですかって」
「そしたら?」
「……そこら辺が馬鹿だなって思うんだけど。自分とはあり得ないって思い込んでるみたいなんだよね。歳の差だけじゃなくて、人と最後まで関わるのを恐れる気持ちが、何故か店長にはあるんだよ。そこを崩さないと、ダメなんじゃないかな」
「そう……ですか」
「房野が早く自覚してくれてたら、もっと気合入れて応援したんだけど。こっちに気がある感じの時はそんなことも出来ないし」
ああ、すいません。
そんなに前から、数家さんには分かってたんだね。
「外野としてはじれったいよ。歳の差があったって大人同士なんだから、さっさとまとまってくれたら良いのに」
「はあ。でも……店長はただ私を娘のように心配してくれてるだけかもしれませんし」
今までの言動を考えればあり得ないこともないし。
「娘にひっつく虫は排除して、自分の認めた男と付き合わせるって? 確かにそういう気持ちもあるかもしれないね。でも房野は娘じゃない。過去がどうであれ、今ちゃんと飯を食えるくらいには働いて自立してるんだ。そこまで構うのはむしろ失礼だろ。それが出来ないのは、冷静になれないような感情があるからじゃないの」