有害なる独身貴族


「自覚しなさいよ」

「え?」

「綺麗になれるんだって自覚しなさい。自分なんかダメ、じゃなくて、いつでも変われるって思ってないと。仮に店長さんに振られたとしても、次に活かせるでしょ。今努力して綺麗になることは無駄じゃないわ」

「史はいつもそうだもんな」


そう言い切る刈谷さんは自信に満ち溢れていて、お店で見ていたときの“ガツガツした”イメージと印象が変わる。

茜さんもそうだけど、綺麗になろうとしている人はいつだって綺麗だ。
向上心が、中から人を綺麗にする。


「……刈谷さんは綺麗ですね」

「馬鹿ね。努力してんのよ。マッサージだって、保湿パックだって欠かさないわ。なにもしないで綺麗になんてなれるわけ無いじゃない」

「そうじゃなくて。中身が綺麗です」


心底感心してそう言うと、クスクスと数家さんが笑い出した。


「史は意外に努力家だろ?」


ああ彼は、彼女のそういうところが好きなんだ。
はじめて、二人がお似合いに見えた。

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