有害なる独身貴族
12.言いなりですから
「あれ」という素っ頓狂な声に、ゆらゆらしていた意識が一気に浮上し、目が開いた。
部屋の中は既に明るく、窓の外からは車や人が動く、日常の生活音がしていた。
ベッドにより掛かる形で寝ていた私は、慌てて布団の中の片倉さんを覗き込む。
「目、覚めました?」
「……つぐみ?」
頷いた彼は、体を起こそうとして顔を歪めた。
押さえつけるように額に手を当てると、彼はくすぐったそうに払う。
まだ熱かった。昨日ほどじゃないけど熱はあるだろう。
それでも、一晩寝てスッキリしたのか反応は昨日より良い気がする。
まだ目覚めきらない彼に、キッチンからお水を汲んでくる。
「水分とってください。あと、食欲はありますか?」
彼は再び目をパチクリさせて、「なんでつぐみが……」と呟いたかと思うと、色々思い出したのか顔を赤くして頭を抱えた。新鮮な反応にちょっとドキリとしてしまう。
「あー。ってか悪い。俺結局ここで寝ちゃったんだっけ」
「熱があったので、私が無理やり寝かせたんです」
悪い、なんて言わないで欲しい。
一緒にいた時間がすごく幸せだったのに、なんだか影がさしてしまう。
「昨日のこと、覚えてますか?」
「んー……ああっ、ていうか、お前は大丈夫なのか? 何もなかったのか? なんであの時間まで帰ってこなかった。電話もつながらねぇし」