有害なる独身貴族
「片倉さんはここで寝ててください。帰ってから聞きたいこともあるので」
「でも、当人が居ないのにここで寝てるわけにいかないだろ。帰るよ」
「良いんです。お留守番していてください。私もしっかり店番してきますから」
「んー。分かった。じゃあ頼むな」
「……後でちゃんとお話きかせてくれますか?」
真剣な顔で言ったら、彼は困ったように目を泳がせた。
「何が聞きたい?」
「……なんで嘘ついた、とか。あ、別に責めてるわけじゃないんですけど」
慌てて取り繕ってみたものの、まあ責めてるように聞こえても仕方ない。
ていうか、責めたい気持ちもちょっとだけあるし。
「あと、聞いてほしいことがあります」
好きだって、ちゃんと言おう。
もし振られたとしても、開き直って傍にいればいい。
もう、逃げるのだけは辞めよう。
「……うん。分かった」
小さく呟いた彼が大きく息を吐いた。「ちょっと横になっていいか」というので、その前に何か食べさせようと立ち上がる。
「片倉さん、あと五分でおかゆ出来ますけど。……って、あら」
あっという間に、彼は再び寝息を立てていた。
平気そうに話していたけど、やっぱり体は辛かったのかもしれない。