有害なる独身貴族
「何を無くしたとしても、あなたに会いたかったんです。一緒に働くようになって、とても幸せでした。片倉さんが作った場所は、私を受け入れ育ててくれたから。私は、ここで生きていきたいんです。片倉さんの傍で、できればあなたの力になりたい。……私は」
怯むな。
伝えるんだ、私。
「私は、片倉さんが好きなんです」
言い切ってから、恐る恐る顔をあげた。
視界に入る片倉さんの顔は、泣きそうだ。
「……もっといい男居るだろう」
ようやく絞り出した言葉がそれかと思ったら、苦い笑いがこみ上げてきた。
「いたかも知れないですけど、私にはピンと来なかったです」
「よりによってこんな親父みたいな歳の男を選ぶこたぁねぇんだよ。俺は……」
断られる気配が存分にした。
だからかな。
彼の声を遮断するくらい大きな声で、私はまくし立てた。
「だったら、片倉さんが決めてください。……私、ずっとあなたの言いなりだったんですよ。生きろって言ってくれたから生きてた。死ねって言われたら多分死ねるし、片倉さんが付き合えって言った人なら多分付き合えます」
「なっ」
目を見開いて、困ったように辺りを見回す。
「私、上田くんと付き合えばいいですか?」
「……上田は、駄目だ」
「じゃあ誰ならいいんですか」
詰め寄ると、ますます困ったように首の後ろをかく。