有害なる独身貴族
「光流……とか、幸紀とか」
「数家さんにはもう振られちゃいましたし、馬場さんだって、私を好きにはなりませんよ」
「どうしてだ」
「私が、あなたしか見てないからです」
彼の動きが止まる。私はダメ押しのように続けた。
「誰だって、自分を見ていない人を好きにはならないでしょう? 私の事を好きじゃないなら、私を幸せにするのも諦めてください」
「それは、……困る」
「私も困ってます。片倉さんがいいという人となら誰とでも付き合います。でも、私が幸せになるには、片倉さんが必要なんです」
顔を赤くして、心底困ったように唇を噛みしめる彼に、泣きたいような気持ちで微笑んだ。
「私、困らせてますか? ……あなたが望むなら消えますよ?」
「そんなのダメだ!」
「じゃあどうすればいいです?」
困り切った彼に近づいて、服の袖を掴んだ。
一瞬ビクついた彼の腰に手を回して、抱きつく。
「片倉さんがどう思おうと、……私は今のあなたといて幸せだって思うんです。歳とか資格とか関係ないんですよ」
「……駄目だろ。俺なんか」
「なんかじゃありませんよ。茜さんが言ってました。幸せになりたかったら、自分と一緒にいて幸せだと思ってくれる人と一緒になればいいんですって。私は片倉さんと一緒に居ると幸せです。片倉さんは? 私じゃダメですか?」
しがみつきながら、自分の気持ちをまくし立てる。
ここで必死にならなきゃ、片倉さんはきっと逃げていくと思って。