有害なる独身貴族
13.一緒に生きよう

 しばらく抱きしめ合った後、どちらからともなく体を離し、見つめ合って笑った。
いざ落ち着いてみると自分のした行動が恥ずかしくなってきた。自分から唇を奪うとか、普通しないよね。

片倉さんも気恥ずかしいのかしばらく肩を鳴らしたりしていたのだけど、やがておもむろに立ち上がった。


「……片付けっか」

「そうですね」


食べ終えたままにしていた茶碗を流しまで運び、並んで洗い始める。
片倉さんが洗ったものを私が拭いて片付けるという順番だ。大きな手がみるみるうちに泡を流していくのをついついじっと見てしまう。
手を伸ばせば触れる距離が、嬉しくてニヤニヤが止められない。
一方、片倉さんは決まりが悪そうに前を見続けている。


「……なんか犯罪者の気分だ」

「あはは」

「笑い事じゃねぇよ」


キスだけでそんなふうに思うなんて、チャランポランなようで真面目だなぁ。

この調子だと、しばらく手は出されないのかしら。
まあ、私も心の準備がつかないからしばらくはいいんだけど。


「数家さんにお礼しなきゃ」

「なんで?」

「私の背中を押してくれたの、数家さんと刈谷さんですもん」

「……あいつは、ホント気配り上手だよな」


また頭が上がらなくなった、といいながらも彼の顔が柔らかく緩む。
いいなぁ。私もこのくらい、片倉さんに必要とされたらいいのに。

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