有害なる独身貴族
「君の保護者を招待するメニューを決めたいんだそうだ。そこまで話がいってるってことはもう結婚まで考えているのかい?」
「……どうなんでしょう。私も分かってません」
困ってそう言うと、北浜さんは呆れたように溜息をつく。
「なんだ、片倉のやつ、ちゃんとつぐみちゃんと話しているのか? いいかい? つぐみちゃん。あの男は思いつめると危険なところがあるから……」
片倉さんの過去が聞けるのかをまじまじと北浜さんを見つめていたら、低い声がそれを遮った。
「北浜さん」
振り返ると、腕を組んだ片倉さんが仁王立ちしている。
北浜さんが体を震わすのが、肩にのせられた手から伝わってきた。
「長いですよ。うちの従業員にセクハラするのやめてください」
言いながら、私の肩に乗っている北浜さんの手を外し、自分の方に引っ張る店長。
ぽすんと彼の胸にぶつかり、そのまま閉じ込められるみたいに背中を抑えられる。
あら? なんか今までより近い?
北浜さんはそれを見てニヤニヤしながら「おお、悪い悪い」と頭をかく。
少し離れたところでは、数家さんが苦笑しながらこっちを見てる。
や、なんか突っ込んで下さいよ。
私はまだ付き合ってる実感が無いのに、周りの方がすっかり温かく見守る感じになっちゃってるのはなぜなの。